使用バージョン
DAZ Studio : 4.12
Blender: 2.82

現在 Booth で JK の制服や下着などの 3D モデルを販売しているのですが、これらを「DAZ Studio にインポートして自分のキャラクターにフィットさせることはできるのか?」という質問をたくさん頂いたので、そのやり方を紹介したいと思います。

もちろん僕が販売している 3Dモデルだけでなく、他のモデルでも同様に作業すれば DAZ Studio にインポートすることができるので試してみてください。

大まかな作業の流れ

具体的な作業のやり方は後ほど詳しく紹介しますが、まずは大まかにどんな作業をするのかを紹介します。

1. フィギアのサイズに服のサイズをあわせる

DAZ Studio 用に作られていない服の 3Dモデルは、大きさもバラバラですからそのままでは DAZ Studio のフィギアにフィットしません。 なので DAZ Studio のフィギアをガイドにして、服を拡大縮小・変形させてフィギアにフィットさせます。 この作業は Blender で行います。

Blenderで服のサイズをフィギアに合わせる

DAZ Studioにインポートして服をフィギア化する

Blender でサイズを合わせた服を DAZ Studio にインポートします。 インポートしただけではただの「置物」なので、服として機能させるために「フィギア化」します。

フィギア化というのは、服にボーンを入れてウェイトをつけるということ。 フィギア化するとフィギアのポーズ・動きに連動して服も同じポーズ・動きをとるようになります。

服をフィギア化してポーズをとれるようにする

DAZ Studio には「Transfer Utility」という自動でフィギア化する機能 ( フィギアのボーンやウェイトを転送する機能 ) があるので、作業自体は簡単です。

サーフェス ( マテリアル ) を調整して一旦完成

インポートした服にはテクスチャなどのサーフェス ( マテリアル ) が適用されていないので、手作業で調整します。

サーフェス(マテリアルを設定する)

これで一旦完成となります。 一旦としたのは、さらにウェイト調整や JCM を編集してクオリティを上げることもできるからです。

それでは具体的な作業を順番に紹介します。

作業1: DAZ Studioからフィギアをエクスポート

まずは服をフィギアのサイズに合わせるために、DAZ Studio からフィギアをエクスポートします。 DAZ Studio を起動して、服を着せたいフィギアをシーンに配置します。 今回は Vivy というフィギアをベースにして作業を進めたいと思います。

DAZ Studioでシーンにフィギアを読み込む

DAZ Studio では表示されているオブジェクトがすべてエクスポートされるので、フィギア本体以外のオブジェクト ( まつ毛や眉毛など ) を非表示にしておきます。 まぁガイドとしてエクスポートするだけなので、まつ毛などがあっても問題ないのですが …。

次にフィギアのポリゴンの解像度を本来の解像度である「Base」にします。 Parameters ペインの Mesh Resolution、Resolution Level を Base に変更します。

フィギアの解像度をBaseにする

これでエクスポート ( 書き出し ) の準備ができました。 [File] → [Export] から .obj として書き出します。

下記のような OBJ Export Options ウインドウが開いたら、Scale ( スケール ) と Axis Conversion ( 座標軸 ) を変更します。

スケールや座標軸を設定する

DAZ Studio のフィギアはとても巨大なので、Blender で編集する場合は Scale を 1% にします。 DAZ Studio から 1% で書き出したフィギアの寸法は実寸に近くなります

フィギアをBlenderにインポートしたところ
Blender にインポートしたところ。高さが 1m 77cm と実寸になります

また DAZ Studio と Blender では座標軸の Y 方向と Z 方向が逆になっています。

DAZ Studioの座標軸の方向
DAZ Studio の座標軸。Y が上、Z が前
Blenderの座標軸の方向
Blender の座標軸。Z が上、-Y が前

ですのでエクスポートするときに座標軸を入れ替えたい気持ちになるのですが、ここは左から X、Y、Z のまま書き出せば OK です。

スケールや座標軸を設定する
座標軸は左から X、Y、Z の順番

ここまでのまとめ

  • DAZ Studio でフィギア本体以外を非表示にする
  • フィギアの解像度を「Base」にする
  • [File]→[Export] から .obj としてエクスポートする
  • エクスポートするとき Scale は「1%」座標軸は「X、Y、Z」の順にする

作業2:フィギアをBlender にインポートする

ここからは Blender での作業になります。 まずは服の 3Dモデルのファイルを開きます。 今回は「JKブラウス・スカート・リボン 3点セット」を用意しました。

DAZ Studio からエクスポートしたフィギアのインポートは、[ファイル] → [インポート] → [Wavefront(.obj)]から行います。

Blenderにフィギアをインポートする

すると下記のようなウインドウが開きます。

座標軸を確認

トランスフォームで「-Zが前方」「Yが上」になっているのを確認して「OBJをインポートボタン」を押します。

Blenderにフィギアをインポートしたところ

すると上記のように服と同じ向きでフィギアがインポートされます。

ここまでのまとめ

  • Blender で [ファイル] → [インポート] → [Wavefront(.obj)] でインポート
  • トランスフォームは「-Zが前方」「Yが上」にする

作業3:服をフィギアにフィットさせる

ここからは服をフィギアに合わせて変形させる作業に移ります。 できるだけ初心者の人でも操作できるように説明していきますが、Blender の基本操作はできる人を対象にしていますのでご了承ください。

オブジェクトモードで大雑把にサイズ・位置を合わせる

まずはオブジェクトモードで拡大縮小移動などを使って、大体のサイズと位置を合わせます。

フィギアに対して服が若干小さいので少し拡大します。

Sキーで服を拡大

ショートカット「S」キーを押すと拡大縮小することができるので、ドラッグしてサイズを合わせます。 また拡大縮小のショートカットキーは、他に下記のようなものがあります。

S X X 軸のみ拡大縮小
S Y Y 軸のみ拡大縮小
S Z Z 軸のみ拡大縮小
S Shift + X X 軸以外で拡大縮小
S Shift + Y Y 軸以外で拡大縮小
S Shift + Z Z 軸以外で拡大縮小

移動させたい場合はショートカット「G」キーが便利です。 G キーを使うと自由に動かせますが、下記のショートカットキーを使うと特定軸で移動させることができます。

G X X 軸方向に移動
G Y Y 軸方向に移動
G Z Z 軸方向に移動
G Shift + X X 軸以外で移動
G Shift + Y Y 軸以外で移動
G Shift + Z Z 軸以外で移動

これらを使用しておおよそのサイズや位置を合わせます。

ブラウス・スカート・リボンのサイズを調整

上記はブラウス、スカート、リボンをそれぞれ拡大縮小してフィギアに合わせた状態です。 一見するとこれで良さそうなのですが、後ろ側をみるとフィギアがブラウスを貫通しています。

ところどころ服が貫通している

次は「編集モード」でこれらを修正していきます。

編集モードで服を修正する

ここからの作業は「編集モード」で行います。 編集モードで作業する前に、注意したいことがあるので先にチェックしておきます。

重要: シェイプキーがある場合は必ず Basis を編集する

シェイプキーというのは DAZ Studio でいう「モーフ」のことです。 今回編集しているブラウスは、第一ボタンを開閉するシェイプキーがあります。

シェイプキーの適用前/適用後

シェイプキーの有無を調べるには「オブジェクトデータプロパティ」を開きます。

シェイプキー

ここにある「シェイプキー」に何らかのシェイプキーが存在する場合は、シェイプキー付きのオブジェクトになります。 なにもシェイプキーがない場合は、シェイプキーなしのオブジェクトになります。

もしシェイプキー付きのオブジェクトを編集モードで編集する場合は、下記の図のようにすべてのシェイプキーをクリア状態「0.000」にしておき、一番上のシェイプキー ( 下記の図では Basis ) を選択した状態で編集モードにします。

一番上のシェイプキーを選択

一番上のシェイプキー「Basis」は、そのオブジェクトの基本形になります。 それ以外のシェイプキーは基本形から変形するモーフなので、基本形である Basis を編集するようにします。

なお「3Dモデル JKブラウス・スカート・リボン 3点セット」で販売している JKブラウスには、前述の第一ボタンの開閉シェイプキーがついています ( Blender ファイルで動作 ) が、スカート、リボンにはシェイプキーは設定していません。


それでは編集モードでの編集に移ります。 ポリゴンの編集の仕方はいろいろあるのですべてを紹介することはできませんが、比較的簡単にできるプロポーショナル変形を使ったやり方を紹介します。

編集モードで編集

まずはマニピュレーターを表示した方が作業しやすいので、Shift + Space キー から「移動」を選択します。 Shift + Space キーからツールを選択すると、上図のようにマニュピレーターが表示されるので、各軸に沿った移動がしやすくなります。

座標系は「ノーマル」に設定しておきます。 ノーマルにするとポリゴンの面の向きを基準にして移動させることができます。 逆に「グローバル」にすると面の向きに関係なく垂直、水平、前後(グローバルな X、Y、Z 軸 )で移動させることができます。

最後にプロポーショナル変形 ( ショートカットキー O ) をオンにしておきます。

プロポーショナル編集で変形

プロポーショナル変形をオンにすると、選択した頂点だけでなくその周辺も一緒に移動するので大きく形が崩れることがありません。 プロポーショナル変形の「範囲」はマウスホイールで調整します。

※ プロポーショナル変形は O キーによる「有効化」の他に Alt + O キーで切り替える「接続」などもあります。 詳しくは「【Blender】メッシュを引き延ばす機能【プロポーショナル編集モード】」を参照してみてください。

その他、左右対称に変形させたい場合はオプションの「X ミラー」をチェックしておくと便利ですが、服の場合は必ずしも左右対称になっているとは限らないので上手に使い分けましょう。

下記はプロポーショナル編集を使って、ブラウスの形を修正したものです。

ブラウスの編集前/編集後

重要: シェイプキーがある場合は影響をチェック

今回のブラウスには第一ボタンを開閉するシェイプキーがありました。 編集モードでは「Basis」を編集したのですが、それ以外のシェイプキーへの影響をチェックしておきます。

シェイプキーの適用前/適用後

シェイプキーの値を上げて変形をチェックしてみると、Basis で変形した部分の影響が出てる場合があります。 今回は上記のように、第一ボタンの周辺( 襟 ) 以外の場所で変形が見られます。 これを修正したいと思います。

全てのシェイプキーをクリアした状態でシェイプキーの「Basis」を選択して、編集モードで修正したい部分の頂点を選択します。

修正したい頂点を選択

今回は C キーでサークル選択モードにして、少し広めに頂点を選択しました。

シェイプに反映

この状態で [頂点]→[シェイプに反映] を選択すると、現在の頂点の位置を全てのシェイプに反映することができます。

シェイプキー修正後
襟以外の部分は修正され、基本形と同じ状態になりました

修正後、シェイプキーを動かして確認します。


ここまでのまとめ

  • オブジェクトモードで大体のサイズ・位置を合わせる
  • 編集モードで調整する
  • 編集モードで編集するときはシェイプキーの有無を確認する
  • シェイプキーがある場合は必ず「Basis」を編集する
  • 編集後その他のシェイプキーに影響が出た場合は修正する

今回はブラウスのみを修正しましたが、同様にスカートも修正します。

作業4:BlenderからエクスポートしてDAZ Studioへインポートする

服の変形が終わったので、DAZ Studio 用にエクスポートしますが、その前にオブジェクトの原点を確認しておく必要があります。

オブジェクトの原点はワールドの原点と一致している

オブジェクトモードで服を選択したときに、服オブジェクトの原点がワールドの原点と同じ位置にある必要があります。 服を変形させるとき、はじめにオブジェクトモードで移動、あるいは回転を行った場合、この原点が下記のようにずれてしまいます。

オブジェクトの原点がずれている例
原点がずれている例

このような場合はワールドの原点の位置に、服オブジェクトの原点を移動させる必要があります。 やり方は簡単で、まず Shift + C キーで 3D カーソルをワールド原点に移動します。

オブジェクトの原点を修正

その状態で [オブジェクト]→[原点を設定]→[原点を3Dカーソルに移動]を選択します。 これで服オブジェクトの原点がワールドの原点に移動します。

これでエクスポートする準備ができました。 服を選択した状態で、[ファイル]→[エクスポート]→[Wavefront(.obj)]から書き出します。

OBJ形式でエクスポート

下記のようなウインドウが開くので、内容の「選択物のみ」にチェックを入れます。

エクスポート時の設定

トランスフォームは「-Zが前方」「Yが上」になっているのを確認します。 また今回はジオメトリにある「モディファイアーを使用」のチェックを外します。 最後に「OBJをエクスポート」ボタンを押します。

今回のブラウスの場合、ボタンもあるのですが、ボタンは別オブジェクトなので後ほど別途エクスポートします。 現時点ではブラウス本体とスカートの二つをエクスポートします。

次に DAZ Studio を起動して、ガイドに使ったフィギアと同じものをシーンに配置しておきます。

DAZ Studioにインポート

[File]→[Import] から、Blender でエクスポートした服をインポートします。 下記のような OBJ Import Options ウインドウが開くので Scale と Axis Conversion を下記のように設定します。

インポート時の設定
Scale 10000%
Axis Conversion 左から X、Y、Z
フィギアにフィットした形でインポート

すると上記のようにフィギアと同じサイズで服がインポートされました。 上記はブラウスとスカートのふたつをインポートした状態です。

ここまでのまとめ

  • Blender からエクスポートする前に原点の位置をワールド原点にする
  • エクスポートするときは「選択物のみ」、トランスフォームは「-Zが前方」「Yが上」、「モディファイアーを使用」のチェックを外す
  • DAZ Studio へのインポートは [File]→[Import]
  • Scale は 10000%、座標軸は左から X、Y、Z

作業5:Transfer Utility で服にボーンとウェイトを転送する

服をインポートしただけではただの置物状態ですから、服にボーンを入れたりウェイトを塗るといった作業をする必要があります。 ただ DAZ Studio には Transfer Utility という機能があって、これを使えば自動で全部やってくれます。

まずは [Edit] → [Figure] → [Transfer Utility] で Transfer Utility を開きます。

Transfer Utilityの設定
Source: Scene Item フィギアを指定
Item Shape Current
Target: Scene Item 服を指定
Item Shape Default
Reverse Source Shape From Target チェックを入れる
Add Smoothing Modifier チェックを入れる
Content Type お好みでチェックをいれ、服の種類を設定する。今回はブラウスなので「Follower/Wardrobe/Shirt」を設定しましたが、設定しなくても服としてきちんと機能します

上記のように設定したら、最後に Accept ボタンを押します。 するとフィギアから服へボーンが転送され、自動的にウェイトも塗られます。

フィギアにポーズを取らせて、服の動きをチェックしてみましょう。

フィギアにポーズを取らせて確認

ポーズに合わせて服が変形するのが確認できます。 これで服のフィギア化はできました。

ただし自動ウェイト、自動 JCM のため、きれいに変形しない場合も多々あります。 特に脇、股間などはきれいに変形してくれないことが多いです。 その修正方法は後ほど説明します。

またスカートの場合は dForce にしてしまった方が楽だと思います。 やり方は過去記事「DAZ Studio:続・普通のスカートをdForceスカートに変更する」に書いたことがあるので参考にしてみてください。


続いて FBM を修正します。 FBM というのはオブジェクトの全体のシェイプを修正するためのモーフです( F… Body Morph の略だったと思うんですけど忘れました )。

今回使用した Vivy というフィギアの場合は、比較的服のシェイプは歪んでいませんが、フィギアによってはシェイプに歪みが生じます。

胸の下あたりが歪むことが多い

特に胸の下辺りが歪むことが多いです。 こういった歪みを修正するのが FBM です。

FBM の自体は通常非表示 ( 隠しプロパティ ) になっているので、これを表示させることからはじめます。

隠れているプロパティを表示

オプションメニューをクリックして「Show Hiiden Properties」にチェックを入れます。 すると下記の図のように隠されていたプロパティが表示されるようになり、「Actor/Full Body/People/Real World」 の中に 「FBMxxx」( xxx はフィギア名 ) というモーフを見つけることができます。

FBMが表示される

今回は Vivy というフィギアを使っているので「FBMVivy」というモーフがあるのがわかります。 このモーフ名を覚えておきます。 またこのモーフがある階層 ( 今回の例では Actor/Full body/People/Real World ) も覚えておきます。

次に [Edit]→[Figure]→[Morph Loader Pro] を選択して Morph Loader Pro を起動します。

下記のようなウインドウが開くので、まずは Scale を 10000%、Axis Conversion を左から X、Y、Z にします。 これは OBJ をインポートしたときと同じです。

Morph Loader Proの設定

Choose Morph Files .. をクリックして、インポートした服と同じ obj ファイルを 選択します。 そして下記のように設定します。

Name FBM の名前 ( 先程覚えたもの。今回は FBMVivy )
Property Groupe FBM のある階層 ( 先程覚えたもの。今回は Actor/Full body/People/Real World )
Reverse Deformations Yes
Overwrite Existing Deltas Only

最後に Accept ボタンを押します。 すると FBM が、Blender からエクスポートしたままの状態の歪みのないシェイプに置き換わります。

FBM修正前/修正後

ついでなのでポリゴンの解像度も高解像度にしておきます。

ポリゴンを高解像度化

シーンペインから服を選択しておいて、[Edit]→[Figure]→[Geometry]→[Convert to SubD…] を選択します。 Subdivision Surface 化 ( ポリゴンの高解像度化 ) されるので Parameters ペインの Mesh Resolution からポリゴンの細分化を調整することができます。

ここまでのまとめ

  • Transfer Utility で服をフィギア化する
  • Morph Loader Pro で FBM を修正する
  • Convert to SubD で高解像度化する

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