–GRAPH 3D

Blenderのスカルプトで服のシワを描いてノーマルマップにベイクする

前々回、前回と Blender で体操着をモデリングして UV 展開をしました。

連載の最後となる今回は、Blender のスカルプトモードを使って、服にシワを入れていきたいと思います。 シワを描くのはマウスだと厳しいので、今回はペンタブを使っていきます。

服を複製してハイポリにする

まず準備として、作成した服のオブジェクトを複製して増やします。 オブジェクトモードで服を選択しておいて、Shift + D キーで複製します。 マウスを動かすと位置がずれてしまいますが、Esc キーを押せば元の位置に複製することができます。

「オブジェクト名.001」というように連番付きでオブジェクトが複製されます。 この複製した方の服をハイポリにしていきますが、同じ名前だと混乱するので分かりやすい名前に変えておきます。 今回はオリジナルの方に「Low Poly」、複製した方に「Hight Poly」というキーワードを名前の後ろに追加することにします。

次に「Hight Poly」の方をハイポリにします。

モディファイアーパネルから「追加」をクリックして「多重解像度」選択します。 多重解像度モディファイアーの「細分化」をクリックすると、ポリゴンが細分化されます。 3D ビューのシェーディングを「ワイヤーフレーム」にしておくと分かりやすいと思います。

これからスカルプトモード(スカルプトは彫刻するという意味)でシワを彫っていくので、ポリゴンは細かい方がきれいに彫ることができます。 その半面、ポリゴンを細かくしすぎるとパソコンの動作が重くなってしまうので、どの程度細かくするのかはそれぞれの環境に合わせて調整してください。

ハイポリモデルにスカルプトでシワを彫る

それではスカルプトモードに変更して、ハイポリモデルにシワを彫っていきたいと思います。 「High Poly」のオブジェクトを選択しておいて「スカルプトモード」にします。

T キーを押してツールパネルを表示しておきます。 ツールパネルにはブラシに関する項目が表示されていると思います。 このブラシを使って、オブジェクトにシワを描いていきます。

シワ彫りのときによく使うブラシ

Blender にはたくさんのブラシが用意されているのですが、僕がシワを描くときには主に下記の 3 種類を使っています。

Sculpt Draw ブラシ

メインに使うブラシです。 「追加」と「減算」を適宜使い分けます ( 追加は出っ張り、減算は引っ込みます )。 ショートカットは X キーです。

Smooth ブラシ

面をスムーズにするブラシです。 Sculpt Draw でシワを描いて、Smooth でぼかしていく感じで使っています。 ショートカットは S キーです。

Flatten/Contrast ブラシ

平らにする、あるいは強弱をつけるブラシです。 やりすぎた部分は Flatten で平らにならしたり、高低差を強調したい場合は Contrast を使ってメリハリをつけたりしています。

人それぞれ描き方も違うし、使うブラシもそれぞれだと思いますが、僕は下記のような感じで描いています。

1. Sculpt Draw ブラシでシワの形をつくる
2. Smooth ブラシでペンの入りと抜けの箇所をぼかす

基本はこれだけです。 強調したい場合は次のようにすることもあります。

3. Sculpt Draw ブラシを減算にして陰の部分を強調する

シワの出っ張りの下を凹ませて凹凸を強調します。

4. Smooth ブラシでぼかす

Sculpt Draw ブラシのように「追加」と「減算」を切り替えられるブラシは、ツールパネル内にあるボタンをクリックして切り替えを行いますが、面倒くさい場合は Ctrl キーを押しながらドラッグします。 Ctrl キーを押している間は、選択されているモードの逆のモードで描くことができるので覚えておくと便利です。

また「対称 / ロック」の部分で「ミラー」の「X」を押しておくと左右対称に描くことができます。


今回は最終的に下記のように仕上げました。

ノーマルマップ用の新規画像を作る

スカルプトでシワを描いたら、次はシワをノーマルマップに焼き付け ( ベイク ) したいと思います。 まずはノーマルマップ用の画像を新規に作成します。 画面を 2 分割して「UV / 画像エディター」と「3D ビュー」を表示します。

3D ビューの方ではオリジナルの「Low Poly」を選択して「編集モード」にします。 ポリゴンを全選択 ( A キー ) して UV マップが表示されるようにしておきます。 UV / 画像エディターの方ではヘッダーの「+」ボタンを押して新規画像を作成します。

これで新しい画像が生成されました。 また Low Poly オブジェクトのポリゴンを全選択すると、新しく作成した画像が UV / 画像エディター上に表示されるはずです。 もし他の画像に切り替わってしまう場合は、Low Poly オブジェクトのポリゴンを全選択した状態で、「リンクされる画像を閲覧」から作成した画像を選び直してください。

シワをノーマルマップに焼き付ける ( ベイク )

画像の用意ができたら、今度はオブジェクト側を準備します。 まずシワを彫った「High Poly」の方の解像度を確認します。 モディファイアーパネルから追加した多重解像度モディファイアーの「レンダー」の数字を確認します。

上の画像では「3」になっています。3 回細分化ボタンを押した解像度です。 ついでに「UVを細分化」のチェックを外しておきます。

次に「Low Poly」の方を調整します。 モディファイアーパネルから「追加」をクリックして「細分割曲面」を選択します。

追加したら細分化の項目にある「レンダー」の数字を「High Poly」の数字 ( この例では「3」) と同じにします。

ビューの数字も同じく「3」にしてワイヤーフレーム表示にすると「High Poly」と同じ解像度になっているのが確認できます。 また先程と同じように「UVを細分化」のチェックを外します。

これで準備ができました。 これからレンダリングするのですが、Blender 2.79 ではレンダリングモードに「Blender レンダー」「Cycles レンダー」があります。 今回はレンダリングが簡単な「Blender レンダー」で進めていきます。

まずアウトライナーでシワを彫った「High Poly」の方を選択します。 次に Shift キーを押しながらオリジナルの「Low Poly」をクリックしてアクティブにします。

「レンダーパネル」を開き、スクロールして下の方にある「ベイク」が見えるようにします。 ベイクの設定は下記のようにします。

ベイクモード ノーマル
法線空間 タンジェント
クリア チェックを入れる
選択→アクティブ チェックを入れる
距離 0.000
バイアス 0.000

今回はノーマルマップを焼くのでベイクモードはノーマルにします。 法線空間は「タンジェント」で「選択 → アクティブ」にチェックを入れます。 先程「High Poly」を選択後、「Low Poly」をクリックしてアクティブにしました。 この順番が肝心です。 距離やバイアスは基本的に「0」にします。

準備ができたらレンダリングエンジンが「Blender レンダー」、アウトライナーでは両方のオブジェクトのカメラアイコンがアクティブになっているのを確認して、ベイクボタンを押します。

すると作成した画像にノーマルマップが焼き付けられます。 できたノーマルマップはヘッダーの「画像」メニューから「画像を別名で保存」を選択して保存しておきます。

保存画面では 8bit か 16bit を選べます。

今回は 16bit を選んで保存します。 これでノーマルマップの完成です。

シワを描いたハイポリのオブジェクトはもう必要ないので非表示にしておきます。 またローポリに設定した「細分割曲面」モディファイアーも必要ないので無効にします。 あとはローポリオブジェクトにマテリアルを作って、テクスチャのノーマルに完成したノーマルマップを設定すれば OK です。

今回のモデルは他のアプリケーションでレンダリングするので、特に Blender でマテリアルの設定はしませんでした。 これで一応「Blender で体操着をモデリング」シリーズがおしまいです。 今回作成した体操着は DAZ 3D Studio にインポートして使っています。

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参考にさせていただいたページ

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