Blender を使ってキャラクターに着せる服 ( 体操着とブルマ ) を作ってみました。
その作業工程を備忘録として記事にしておきたいと思います。 全体のおおまかな作業工程は下記のような感じ。
- 素体から服の部分のポリゴンを複製してベースメッシュを作る
- ベースメッシュを服の形に編集する
- UV 展開してテクスチャ ( カラーマップ ) を作る
- スカルプトでシワを描く
- ノーマルマップ、ディスプレイスメントマップをベイクする
Blender の他に使用するツールは、テクスチャを作るときに Photoshop などの画像編集ソフトを使います。 また服のシワを描くときにはマウスだと厳しいのでペンタブを使いました。
とても長くなりそうなので何回かに分けて記事にしたいと思います。 今回はベースメッシュ作りと、記事の後半では服を作るのに必要な Blender の基本操作を紹介します。
素体からベースにするメッシュをつくる
服をモデリングしようとするとき、いろいろなアプローチがあると思います。 すこしずつ丁寧にポリゴンを作っていく方法や、平面やキューブなどのプリミティブをもとに変形させてモデリングする方法、ベースフィギアからポリゴンをコピーしてモデリングする方法などなど …
Marvelous Designer 買えよって言われちゃいそうですが、Blender だけで頑張ってみたいと思います。 今回は比較的初心者でも簡単にできる「ベースフィギアからポリゴンをコピーしてモデリングする方法」でモデリングしていきます。
まずはフィギアを Blender にインポートして編集モードにします。 作りたい服の形にあわせて頂点を選択します。 今回は半袖の体操着をつくりたいので下記のように選択しました。
そしてそのまま Shift + D キーで複製します。 マウスを動かすと位置がずれてしまいますが Esc キーでもとの位置に戻ります。
次に複製したポリゴンを別のオブジェクトにします。 P キーを押して「別のオブジェクトに分割」で「選択物」を選びます。 これで服の部分のポリゴンだけを、下記のように別のオブジェクトにすることができました。
このままだとフィギアと服の部分のポリゴンがぴったり重なっているので、服の方のメッシュ( 以下ベースメッシュと呼びます ) を少し拡大します。 拡大縮小は S キーですか、そのまま拡大すると位置がずれてしまうので、 Alt + S キー ( 法線方向に拡大縮小 ) で拡大します。
ここからは左右対称になるミラーモディファイアーを使ってモデリングしたいので、ベースメッシュを半分にしてしまいます。 右でも左でも構わないので半分を選択して X キーで削除します。
半分にしたらモディファイアーパネルからミラーモディファイアーを追加します。
これで準備完了です。 ここからは「体操着」っぽくベースメッシュを編集していきます。
ベースメッシュを服の形状に編集
ベースメッシュはフィギアの一部を複製したものなので、ポリゴンの構造 ( トポロジー ) が筋肉の流れに沿ったものになっています。 肌にぴったりフィットした服、例えばレオタードや水着などはフィギアのトポロジーが生きる場合もありますが、今回作るのは体操着なので筋肉の流れはほとんど関係ありません。
なのでこれを服の構造を意識して修正していきます。 どこまで修正するか?は時間と手間との相談です。 まずは気になった部分、バスト周りと首周りを修正しました。
いきなり修正後の画像を掲載してしまいましたが、後ほど初心者さん向けに具体的な操作方法を紹介します。
バストまわりは思い切って一度ポリゴンを削除し面を貼り直しました。 ついでにおへそも削除します。 首周りもまる首っぽく修正していきます。
それから面についてですが、なるべく三角形のポリゴンは使わずに四角形でモデリングするようにしています。 最終的にレンダリングするアプリケーションにもよりますが、Subdivision Catmull–Clark を使って面をスムージングする場合、三角形ポリゴンだと変な陰 がでることがあります。 DAZ 3D Studio なんかはこれですね。
逆に三角形が推奨されているソフトもあるようですが、四角形は半分にすれば三角形になるので、ベースメッシュは四角形で作っておけば問題ないと思います。
服の構造を考えると、前身ごろ、後ろ身ごろ、袖ときれいに分割できるようなトポロジーにするのがいいかなと思いますが、ベースにしたフィギアによっては、修正に手間がかかるものもあります。 フィギアをベースにしたモデリングのデメリットでもありますね。
今回ベースにしたフィギアは DAZ 3D Studio の Genesis 8 Female なんですが、肩の筋肉の流れがあるので袖と身ごろを分割できるような構造になっていません。 これを修正するのはちょっと手間がかかるので、今回は見送ることにしました。
それでは袖や裾の形を修正して体操着らしいフォルムにしていきます。 またウエストまわりもすこしゆったりさせました。
いちおうこれでベースメッシュの完成です。 Blender の基本操作だけで比較的短時間でできてしまいます。
初心者さん向け Blender の基本操作・小技集
先程はいきなり修正前・修正後の画像を掲載していましたが、どのような操作で修正するのかというと … それこそ色んな操作をします。 例えば面を貼ったり頂点を動かしたり、複数の頂点をくっつけてひとつにしたりとさまざまです。 なのでここでは初心者さん向けに、少しだけですが僕がよく使っている Blender での基本的な操作を紹介したいと思います。
といっても僕もまだ Blender 歴 2年程度の初心者なんですけど …。 ちなみに使用しているバージョンは未だに 2.79 です。
ポリゴンの編集は「編集モード」で行います。 オブジェクトモードと編集モードの切り替えはショートカットキー Tab キーを使うと便利です。
いろんな選択の仕方
まずは「選択モード」から紹介します。 頂点を選択するのか、辺を選択するのか、面を選択するのかを切り替えます。
ヘッダー ( 画面下にあってもヘッダー ) のアイコンをクリックしたり、Ctrl + Tab キーから切り替えることができます。
次は選択の ABC を紹介します。 まず A キーは全選択です。
もう一回 A キーを押すと全選択解除です。
B キーは矩形選択です。 ドラッグして矩形の範囲内を選択します。
C キーはサークル選択 ( ブラシ選択 ) です。
ブラシが表示されるので、ドラッグして選択していきます。 ブラシサイズはマウスホイールで調整できます。 上記はミラーモディファイアーを使っているので、左右対称に選択されてます。 サークル選択モードから抜けるには Esc キーを押します。
矩形選択やサークル選択で Shift キーを押しながらドラックすると選択解除になります。
選択ではないのですが、Z キーを押すとポリゴンがスケルトンになるので、裏側の頂点などを選択したいときに便利です。
もう一度 Z キーを押せば通常の表示に戻ります。
ループ選択も便利です。 ループ状に繋がっているポリゴンをぐるっと選択できます。
ループ選択は Alt キーを押しながらクリックするだけです。 上記は面のループ選択ですが、辺や頂点でも操作は同じです。
リンク選択もよく使います。 例えば胸元にボタンがあるとします。
このボタンのポリゴンは服とはつながっていません。 マウスカーソルをボタンに合わせて L キーを押すと、ポリゴンがつながっている部分だけを選択 ( つながってるからリンク選択といいます ) できるので、ボタンだけを簡単に選択することができます。
移動・回転・拡大縮小とプロポーショナル編集モード
移動・回転・縮小はショートカットで行うと楽です。 まず移動は G キー、回転は R キー、拡縮は S キーです。 そして各ショートカットキーの後に軸キーを続けて押すと、その軸だけに限定することができます。 例えば GX と押すと X 軸で移動、SZ と押すと Z 軸で拡縮という感じです。
次にプロポーショナル編集モードを紹介します。 プロポーショナル編集モードには 4 つのモードがあります。
- 無効化
- 有効化
- 投影(2D)
- 接続
まずは「無効化」から紹介します。
プロポーショナル編集を無効化にしてから、 G キーで頂点をひとつ移動させてみると、上記の画像のように選択した頂点のみが移動します。
続いて「有効化」にして同じように G キーで頂点をひとつ移動させてみます。 すると下記の画像のように、周辺の頂点も引っ張られるように移動するのでバスト全体が膨らんでいきます。
おおきな円は影響範囲で、これはマウスホイールで大きさを調整することができます。 また減衰タイプもデフォルトではスムーズになっていますが、ヘッダーの下記の部分で変更することができます。 いろいろなタイプをひととおり試してみることをお勧めします。
プロポーショナル編集の無効化と有効化は O キーで切り替えることができます。
「接続」はポリゴンがつながってる部分にだけ影響を与えます。 例えば下記の画像のように前開きのシャツがあったとします。
服の右側の辺だけを選択して「接続」で移動させると、ポリゴンがつながっている部分だけをプロポーショナル編集できるので、服の前を開くことができます。 同じことを「有効化」でやろうとすると服の左側の辺も一緒に動いてしまうのでうまくいきません。 接続のショートカットキーは Option + O キーです。
「投影(2D)」については下記の動画がわかりやすいと思うので参照してみてください。
【Blender】「投影(2D)」と「有効化」の違い – YouTube
今回は移動を使ってプロポーショナル編集を紹介しましたが、回転や拡縮でも原理は同じです。
頂点・辺・面を作る、移動する、揃える
ここからは頂点や辺、面を追加したりする方法を紹介します。
エクストルード (掃引)
まずエクストルード ( 掃引 ) ではでは頂点や辺、面を引っ張りだすことができます。 ショートカットキーは E キーです。
辺の作成・面貼り
2 つの頂点を選択してから F キーを押すと辺をつくることができます。 3 つ以上の頂点を選択してから F キーを押すと面を貼ることができます。
グリッドフィル
周りの辺を選択してから Ctrl + F キーからグリッドフィルで穴を埋めることができます。
このとき頂点選択モードだと三角ができたりすることがありますが、辺選択モードで実行するときれいな格子状になると思います ( これは僕の経験則です )。 他にも Alt + F キーで面を貼ることもできます。
辺を分割する
ふたつの頂点を選択 ( 辺を選択 ) しておいて W キーからスペシャルメニューを開き「細分化」します。
辺上で頂点を移動
頂点を選択しておいて、G キーを 2 回押すと辺上で頂点をスライドすることができます。
頂点をスムーズにする
「頂点スムーズ」で、でこぼこの頂点をスムーズにすることができます。
メニューの「メッシュ→ 頂点 → 頂点スムーズ」か、T キーを押してツールパネルを出し、ツール / メッシュツールにある「頂点スムーズ」ボタンをクリックします。 頂点スムーズは何度もかけるとどんどんフラットに、そして小さく縮んでいくので事前にある程度頂点の位置を合わせておくといいと思います。
他にも W キーからの「スムーズ」でも頂点をスムーズにすることができます。
ループカット
Ctrl + R キーでループ状に頂点を追加できます。 紫のラインができるので、クリックするか Enter キーを押します。 その後位置をスライドして調整し、最後にもう一度クリックまたは Enter キーで確定します。
切れ目を入れる
切れ目を入れたい部分を選択してから V キーを押します。
マウスカーソルを動かすと頂点が移動して切れ目ができてるのがわかります。 位置が決まったらもう一度クリックすれば OK です。
頂点を x 軸 0 の位置に揃える
ミラーモディファイアを使っているときは、基本的に X 軸 0 の位置にオブジェクトの中心を揃えますが、モデリングしているうちにずれてしまうことがあります。 下記は頂点がずれて隙間ができてしまっているケースです。
これを中心にあわせるには、まずは中心にしたい頂点を選択して S X N 0 の順番でキーを押します。 すると選択した頂点は X 軸で揃います。 つづいて N キーを押してプロパティシェルフを開いて、トランスフォームにある頂点の X 軸を 0 にします。
その他のTips
基本操作というわけではないのですが、その他知っておくといいかも … と思った Tips をいくつか紹介します。
エッジを際立たせる
この体操着の袖口は下記のような形になっています。 このままだとレンダリング時にスムージングをかけた場合などに、エッジが潰れて丸くなってしまう場合があります。
そういう場合はエッジを出したい辺の両側にループカットを入れるとエッジが丸くなりません。
マニュピレーターの方向
マニュピレーターの方向は任意に変更することができます。 デフォルトでは「グローバル」になっていると思います。 グローバルというのはいわゆるワールド座標で絶対的なものと考えていいと思います。 Blender の場合は X 軸で左右、Y 軸で前後、Z軸で上下になります。
マニュピレーターを「ノーマル」にすると法線、つまり面の向いている方向が基準になります。
2 列を 1 列に、4 列を 2 列にまとめる
モデリングをしているとき、列を増やしたい・減らしたいという場合がでてきます。 四角形ポリゴンだけで実現させるにはいろいろなアプローチがあるようですが、僕は下記のような構造をよく使います。 まぁベースにしたフィギアでも使われているものなので、それを参考にしているだけなんですけどね。
基本操作や基本知識についてはまだまだたくさんあるのですが、長くなりそうなのでこの辺で。 基本操作については SpreadBlender さんの動画がわかりやすいと思います。 古い動画ですが基本操作は変わってないですし、動画一本 2、3分ですのでサクッと見れると思います。 60本以上ありますが、必要なものだけ見ればいいので。
ブルマのモデリング
ブルマも体操着の上とまったく同じアプローチでモデリングしました。
次回はこれらにテクスチャを貼るための準備、UV 展開をしていきたいと思います。